ミシンに関するお問い合わせが多いので、更に詳しく説明します。

まず『失敗しないためのミシン選び』の項目を見ていただいた上で、お読みください。

耐久性があり、どんな生地でも縫え、特に洋服をきれいに仕上げる目的でミシンを購入する場合は、『職業用タイプのミシン(プロタイプミシン)』をお勧めします。

電子ミシン、コンピュータミシン、ジグザグ機能の付いたミシンは『家庭用ミシン』です。職業用タイプのミシンは、直線縫い専用でジグザグ縫いはできません。不便の様ですが、多機能を兼用することは、ミシン全体に負担がかかり、耐久年数はぐんと減ります。特に洋服をきれいに仕上げるためには、ミシン目(ステッチ)が大切です。力があり直線縫いがきれいな『職業用タイプのミシン』を勧めます。家庭用ミシンにも直線縫いのみのミシンがありますが、力が無いために布の端にステッチをかけたり、急に布が厚くなるとミシン目は乱れます。

何を基準に『職業用』なのか『家庭用』なのか判断したらよいのでしょう。

パンフレットや取り扱い説明書の『仕様』とか『機能』とかの欄に『縫い速度』とか『回転数』などの項目があれば、その数字を見てください。『1300針/分』以上であれば『職業用タイプ』と判断してよいでしょう。

家庭用ミシンの説明書には、この速度を載せていない物がほとんどですから、説明項目になければ『家庭用』と判断してよいと思います。ちなみに、この回転数は家庭用のミシンの比較的しっかりしたもので500回転ほどです。この比較でも職業用タイプは約3倍の力があります。仕事目的の人や長年使う人にとっては、この『縫い速度(モーターの力)』は、判断材料としては大変大事ですから、仕事仕様のミシンには必ず明記されています。

「仕事にする気持ちはないから」とか「趣味の範囲だから」という人も、名称が『職業用』なので、何やら近寄り固い感じがしますが、洋服を作る目的であればこちらを勧めます。でき上がりは明らかに違います。家庭用から職業用に買いかえた人の第一印象は「何だか急に腕が上がったような気がする」という感想を持つ人が多いようです。ミシンがきれいに縫ってくれるということの様です。ミシンは手縫いの代用として世に出てきたものです。第三の腕が「不器用」より「器用」で確実なミシンの方が腕も上がるでしょう。

『職業用ミシン』としては、昔ながらの足付き台付きのミシンがありますが、場所を取りますので、近頃の住宅事情に合わせた『職業用タイプのポータブルミシン』が出ています。価格では、¥120000〜150000程です。この価格の差は、追加機能の差で、モーターの力は同じですから、12万円台の物で充分でしょう。

高い方は自動糸通しや差動送り(いせやギャザーができるという機能)や自動糸切りなどの機能が付いている物が多いようです(メーカーによっても多少異なります)。これらの機能が要不要かは使用者の判断に委ねられますが、便利なようでいて実はあまり使わない機能もありますので、よく考えて選択しましょう。メーカーの選択はここでは差し控えますが、購入者の反応や使ってみた手応えから最近の人気機種は絞られるようです。

職業用ミシンは、信頼できる販売店であれば中古ミシンもお勧めです。家庭用ミシンは、故障が多いので勧めませんが、職業用タイプの物は、中古でも整備すればかなり使えます。機能的には複雑な物ではありませんので、整備や修理でかなり長く使えます。
ただ、くれぐれも中古は慎重に選択してください。 長年耐える作りにはなっていますが、状態の良いものかの判断は見た目では分かりません。 信頼できる販売店とメンテナンスについても確認が必要です。

職業用ミシンより力のあるミシンに『工業用ミシン』がありますが、これは、職業用の数倍の力があります。自宅で本格的に仕事をし、短時間に沢山仕上げなければいけない場合は、この力とスピードはお勧めですが、小さなお子様がいらっしゃる家庭では、危険もありますので注意してください。

ロックミシンについても、少しお話しします。2本糸ロックを使っている人は、たぶん3本糸ロックがほしくなります。3本の方が裏も表もきれいだからです。これについても近頃粗雑な量産ロックミシンが多く、「糸調子がきたない。修理しても直らない。どうしたらいいの!」とよく質問されます。量産ミシンの場合は注意が必要です。メーカーが大丈夫だから買ったという場合も、近頃は、価格を下げた量産ミシンと、機能を重視した正規のミシンとを区別して出しているメーカーもありますので注意してください。

ミシン目は、機械の内部の微調節の部分が大事ですから、組み立て段階で決まってしまいます。不良ミシンは修理しても直りません。これから購入する人には「2〜3万円台の3本ロックミシンは、避けた方が賢明です」と、念の為伝えています。購入してすぐに買い換える人を見るのはとても気の毒です。買い換えるのなら最初から耐久性があり糸目がきれいなプロパーのミシンをお勧めします。

4本糸ロックミシンも出ていますが、たぶん4本までの必要はないと思います。4本の内の1本が地縫いの働きをしますが、実際の服の製作では、縫い代それぞれにロックをかけた後 アイロンで割りたい服や、縫い代の幅も既定幅ではなく、それより多い幅(例えば1.5〜2cm)を残す服が多いものです。 正式なお洋服の製作では4本ロックは必要ありません。 子供服やカットソーなどでは、4本糸ロックの出番もありますが、それも 3本糸ロックが充分に機能します。

 近年3本糸ロックの製造を中止するメーカーが出てきています。 4本糸ロックの販売に力を入れた結果でしょうが、服作りでは3本ロックで充分なところ、この状況は残念です。 4本糸ロックは3本で使用することができますので、4本糸ロックを購入して3本糸で使うなど工夫しましょう。

実際、当教室でも4本糸ロックがありますが、結局 糸を一本抜いて3本で使っています。 4本糸ロックの出番は当教室ではありません。 3本で充分ではないかと思います。

以上、ざっと説明しましたが、一つの意見として判断材料にしてください。

1.失敗しないためのミシン選び

2.具体的な選択基準 

3.工業用ミシン 

4.職業用ミシン

5.家庭用ミシン 

6.ロックミシン 

7.中古ミシン